目次

ロジカルライティングとは

ロジカルライティングとは、「論理的で分かりやすい文章を書く方法」のことです。「ロジカル」とは英語で「論理的な、筋の通った」という意味です。文章は相手に何かを伝えるために書かれます。そのため、伝えたいことを整理し、筋道を立てて、論理的に書くロジカルライティングのスキルが求められています。

研修の狙い

  • 分かりやすい文章/ロジカルな文章について理解する
  • 相手の理解を深める/納得性を高めるためのテクニックを理解する
  • 同じ情報から「主張」を導き出せるようにする
  • 相手が求める「論点」を意識した文書を作成できるようにする

プログラム

第1日目:基礎編 相手に伝わるロジカルライティングのスキルを習得する

1.相手に伝わらない文書を作成する人の特徴・クセ
2.文書を書く時には、メッセージ(相手に伝えること)を意識する
3.人は結論ではなく、「論拠」を見ている
4.人は構造で理解する
5.論理的な文書を書くためのテクニック
(1)帰納法、演繹法で構造を作る
(2)因果関係の整合をとる
(3)MECEで信頼性を高める
(4)クライテリアを意識し、ディメンジョンを整えて納得性を高める
6.情報を整理して構造化を図ることで、自分の主張を導き出す
(1)解説
(2)ワーク
7.主張を導き出すためのタイトル付け(概念化)とは

第2日目:応用編 相手に伝わるロジカルな文書を作成するスキルを習得する

1.事前に提出いただいた文書の講師による添削とその解説
2.問題を解決するための文書(提案書)の作成:主張を持った資料の作成
(1)問題の掘り下げ(解説+個人への質問)
(2)解決策の提案(解説+個人への質問)
3.相手・上司が求める文書(報告書)の作成:論点に沿った資料の作成
(1)論点を意識する(解説+個人への質問)
(2)論点に沿って主張、構成を合わせる(解説+個人への質問)
4.目的に応じて情報を再整理する
5.まとめ
※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00の2日間です。
※第1日目と第2日目との間は、最短でも1週間の間隔をいただきます。
※研修時までに、ご自身が作成した文書を提出していただき、2日目の研修時に添削結果を研修資料として用いて解説します。
※添削、添削に基づく資料作成が入るため、9人程度が適切規模です。
(添削、添削に基づく資料作成がない場合は、30人程度(3人/グループで、10グループ)まで対応可能です。)

相手に伝わる「ロジカルライティング」を学ぶメリット

業務の効率化につながる/相手の理解が早まり、ビジネスのスピードが速まる

ビジネスでは社内はもちろん、取引先や顧客といった社外の人と文章でコミュニケーションをとる場面は多くあります。文章でのコミュニケーションにあたっては正確な情報伝達ができていないと、お互いの認識に齟齬が生じ、ミスが発生しやすくなります。ロジカルライティングのスキルが備わっていれば、簡潔で要領を得た文章によって正確な情報伝達ができ、認識の齟齬をなくすことができるようになり、ミスが減少することから、業務が円滑に進められるようになり、効率化につながっていきます。
また、ビジネスの(報告)文書では、送り手と受け手があり、最終的には受け手が文書の内容を理解する必要があります。ロジカルライティングされた文書は、受け手の理解が早まり、意思決定や指示などが早く戻ってくることになり、業務のスピードが速くなります。

提案力が向上する/相手の納得性が高まり、当方で意図した方向に進めやすくなる

ロジカルライティングでは、伝えたい内容を整理し、構成を組み立て、順序立てて文章を作成していきます。ロジカルライティングを用いて作成された文章は、原因と結果、根拠と結論など、情報の繋がりをきちんと把握できることから、取引先や顧客に対して納得感の高い提案となり、提案を受け入れてもらえる可能性が高まります。提案に際しては、社内では当たり前の共通認識として捉えていることも、社外の人にとってはそうではないケースも多く、認識の違いや誤りを未然に防ぐためにもロジカルライティングのスキルが求められるのです。
また、ビジネスの(報告)文書では、受けた相手に理解してもらうだけでなく、報告した内容を元に、(リ)アクションをとってもらう必要があります。相手に伝わるようにロジカルライティングされた文章は、受け手の納得性が高まり、相手に当方が意図した(リ)アクションを採ってもらいやすくなります。

相手に伝わる「ロジカルライティング」の手順

ロジカルライティングが出来ていないと、知らず知らずのうちに、読み手(相手)からは論理的ではない文章を書いてしまい、読み手(相手)から、「これから言えることは何なのか?/で?君は何を言いたいんだ?」とか、「こちらが質問した内容に沿っていない/こちらが欲しい情報になっていない」というような質問を受ける/疑問を抱かれることになってしまいます。
ここからは、そうならないための、具体的にロジカルライティングの書き方の手順を順番に詳しく解説していきます。

相手には欲しい情報がある

ビジネスの現場では、「〇〇について、調べて欲しい」という指示をされることがあります。
例えば、上司から「牛丼市場について調べてくれ」と指示があったとします。
そこで、ChatGPTに、「日本の牛丼市場について教えて欲しい」と質問をしてみると、次のような回答が得られました。
(情報は2025年1月時点)
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日本の牛丼市場は、長い歴史を持ち、現在も活況を呈している食文化の一つです。牛丼は、煮込んだ牛肉と玉ねぎを甘辛いタレで味付けし、ご飯の上に乗せた料理で、手軽に食べられることから、日本国内外で広く親しまれています。日本の牛丼市場についていくつかの主要なポイントを紹介します。

  1. 主要なチェーン店
    日本の牛丼市場を代表するチェーン店には、以下のような企業があります。
    吉野家
    1935年に創業された、最も有名な牛丼チェーンです。国内外に多くの店舗を展開し、
    手軽に楽しめる牛丼を提供しています。吉野家は「牛丼」と言えば最初に思い浮かぶ
    ブランドとなっています。
    松屋
    1966年創業で、吉野家と並ぶ牛丼チェーンの大手。松屋は、牛丼だけでなく、定食や
    カレー、朝定食メニューなど幅広いメニューを提供している点が特徴です。
    すき家
    1982年創業で、これも大手チェーンの一つです。すき家は牛丼のほか、定食メニュー
    やサイドメニューが豊富で、近年は「オリジナルメニュー」の開発に力を入れていま
    す。
  2. 市場規模
    牛丼は、日本国内で非常に大きな市場規模を誇ります。市場規模は数千億円に達しており、特にサラリーマンや学生、忙しい主婦などに人気です。近年では外食の手軽さやファーストフードとしての利便性が評価されています。
  3. 消費動向
    外食需要の増加
    外食文化が根強く、牛丼チェーン店は手軽で価格が安いことから、忙しい日常の中で食事を済ませる場所として多く利用されています。
    デリバリーやテイクアウト
    牛丼チェーンでは、デリバリーやテイクアウトのサービスを強化しており、特に都市部では便利さが消費者に支持されています。
    品質とヘルシー志向
    健康志向の高まりにより、低カロリーや野菜を豊富に使用したメニューが注目されています。また、アレルゲン対応やビーガン対応のメニューも増加しています。
  4. 価格競争
    牛丼チェーンは、競争が激しい市場で価格の面でも争っています。特に、ライバルチェーンがキャンペーンやセールを実施することが多く、消費者にとっては値段が重要な要素となっています。
  5. 海外展開
    日本の牛丼チェーンは、海外市場にも進出しています。特にアジア諸国やアメリカでの需要があり、海外展開を進める企業も多いです。日本の味を提供することが人気を呼んでおり、現地の人々に新しい食文化を紹介しています。
  6. 市場の変化と進化
    牛丼市場は、消費者のニーズの変化に対応して進化しています。例えば、デジタルオーダーシステムやロボットを利用した接客、店舗のデザインの変更など、効率化と顧客体験の向上を目指す動きが活発です。
    また、低炭素社会を意識した取り組みや、環境への配慮も重要なテーマとなっており、企業の社会的責任(CSR)が市場戦略に影響を与えることもあります。
  7. まとめ
    日本の牛丼市場は、競争が激しく、消費者のニーズや社会の動向に合わせて多様化しています。手軽でおいしい食事として今後も需要が続くと予想され、国内外において牛丼は日本の食文化を代表する存在として根強く愛され続けるでしょう。

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これを報告した所、上司からは、「間違いではないが、欲しい情報ではない」と否定されてしまいました。
確かに、牛丼市場を調べるようにとの指示はあったものの、その情報の利用目的を聞いていませんでした。
そこで、上司に、「この報告をすることで、どういうことを知りたいのですか?」と聞いてみました。
すると、上司からは、「ウチは外食産業で、これまでは牛肉のステーキチェーンを展開してきたけど、安くて良質な牛丼に適した国産牛肉を安定的に入手するルートが確保できそうだから、例えば、当社がこれから牛丼市場に参入する意義が持てるかどうかを知りたい」と、報告の目的を改めて教えてもらいました。

そこで、ここからは、結論を意識した文書の作成を行っていきます。

結論を意識する

上司(相手)が求めていることは、「牛丼市場に参入する意義が持てるかどうか」ということなので、最終的には、「参入する意義が持てます」、或いは「参入する意義が持てません」のどちらかが報告できないと、上司(相手)が求めていることに応えることにはなりません。
そこで、情報を整理し、最終的には結論につながる文章を作成していきます。

それぞれの項目が意味を成なさなければ、結論が導き出せない

そこで、改めて、ChatGTPの文書で、それぞれの情報で何が言えるのか、整理し直してみました。

  1. 主要なチェーン店
    牛丼チェーンでは、「吉野家」「松屋」「すき家」がある。
  2. 市場規模
    牛丼は、日本国内で非常に大きな市場規模がある。
  3. 消費動向
    忙しい日常での手軽な外食需要を満たしている他、デリバリーやテイクアウト、ヘルシーさなども求められつつある。
  4. 価格競争
    価格競争が激しい。
  5. 海外展開
    アジア諸国やアメリカで需要があり、海外展開を進めている企業もある。
  6. 市場の変化と進化
    デジタルオーダーなど、効率化と顧客体験の向上が求められている。

これらの情報では、方向性が散漫で、最終的に「参入する意義が持てる」「参入する意義が持てない」に集約できなさそうです。
そこで、項目それぞれで「参入する意義が持てる」「参入する意義が持てない」が言えるかどうか、言えないのであれば、何が足りないのか、更には、その項目自体が必要かどうか、を考えてみました。

  1. 主要なチェーン店
    牛丼チェーンでは、「吉野家」「松屋」「すき家」がある。
    ・大手3社があることがわかったが、これだけでは意義が見出せない。
    ・3社の特徴を掘り下げる必要がある。
    ・3社の特徴によっては、参入する意義が見出せるかも知れない。
  2. 市場規模
    牛丼は、日本国内で非常に大きな市場規模がある。
    ・大きな市場規模があることはわかったが、これだけでは意義が見出せない。
    ・市場規模の傾向を調べる必要がある。
    ・増加傾向であれば、参入する意義が見出せるかも知れない。
  3. 消費動向
    忙しい日常での手軽な外食需要を満たしている他、デリバリーやテイクアウト、ヘルシーさなども求められつつある。
    ・特に牛丼市場に特化している情報ではないため、対象の情報から外すことにする。
  4. 価格競争
    価格競争が激しい。
    ・どの程度の価格帯が求められ、そこに応えられるかどうかがわからなければ、意義が見出せない。
    ・価格情報について調べる必要がある。
    ・あまりにも安いのであれば、参入する意義が見出せない、となるかも知れない。
  5. 海外展開
    アジア諸国やアメリカで需要があり、海外展開を進めている企業もある。
    ・特に現在は、海外展開を検討していないため、対象の情報から外すことにする。
  6. 市場の変化と進化
    デジタルオーダーなど、効率化と顧客体験の向上が求められている。
    ・特に牛丼市場に特化している情報ではないため、対象の情報から外すことにする。

それぞれの項目が意味を成すように、情報を整理し直す

そこで、必要と思われる項目を更に掘り下げてみました。

主要なチェーン店
牛丼チェーンでは、「吉野家」「松屋」「すき家」があり、それぞれ特徴がある。

  • 吉野家:牛肉を使ったメニューを充実させている。
  • 松屋 :牛丼以外の定食のメニューを充実させている。
  • すき家:牛丼のバリエーションを充実させている。

市場規模
牛丼は、日本国内で非常に大きな市場規模があり、増加傾向にある。

  • 市場規模:約4,600億円
  • 成長率:3.6%
  • 市場シェア:吉野家(1,137億円、25%)
         :松屋(824億円、18%)
         :すき家(2,621億円、57%)

価格競争
並盛1杯450円程度と、価格競争が激しい。
<価格:並盛>
 ・吉野家 453円
 ・松屋  430円
 ・すき家 450円

それぞれの項目から結論につながる主張を導き出す

それぞれの項目から、掘り下げた結果を踏まえ、結論につながる主張を導き出してみました。
なお、先に上司からった、当社の強みについても整理しました。

主要なチェーン店
牛丼チェーンでは、「吉野家」「松屋」「すき家」があり、各社特徴を打ち出しており、当社の強みを活かした特徴を打ち出せるのであれば、参入する意義が持てる。

市場規模
日本には牛丼市場があり、成長をしているため、参入する意義が持てる。

価格競争
1杯450円程度の価格で、価格競争が激しいことから、価格は差別化要因にはなりにくいばかりか、この価格を満たすことができなければ、参入する意義が持てない。

当社の強み
安くて良質な牛丼に適した国産牛肉を安定的に入手するルートが確保できるため、これを特徴に繋げることができれば、参入する意義が持てる。

主張を組み合わせたストーリーから結論を導き出す

4つそれぞれから、「参入する意義が持てる」「参入する意義が持てない」という、結論につながる主張が導き出されました。
そこで、これを整理すると、
「当社が、牛丼市場に参入するに当たっては、既にある大きな成長市場に参入する形になり、「安さ」は必須である一方で、差別化要因にはなりにくいが、(安さ以外の、例えば「良質」「安定的」などの)強みを活かした特徴を打ち出すことができるのであれば、参入の意義が持てる。」
と言えることになります。

これを上司に報告した所、「おっ、そうそう。こういう報告(結論)が欲しかったんだ!」と喜ばれました。

相手に伝わる「ロジカルライティング」のコツ

上司とのやりとりを通じて、相手に伝わるロジカルな文章を作ることができましたが、ここで改めて、相手に伝わるロジカルライティングのコツを整理してみます。

相手が気にしていること(=論点)を意識する

ヒトは、外から情報を得る(部下から報告を受ける)ことで、自分が期待していることを裏付ける/不安に思っていることを解消しようとします。
一般的には、この、期待していることや不安に思っていること、言い換えれば、気にしていることを「論点」と言い、相手が知りたい情報とは、実はこの「論点」に他なりません。
そこで、相手に伝わる文章にするためには、「論点」を押さえておく必要があります。
先の牛丼の話で言いますと、上司は「牛丼市場に参入する意義が持てるかどうかを知りたい」ということでしたので、論点は「牛丼市場に参入する意義が持てるかどうか」です。
従って、報告するための結論としては「参入する意義が持てる」または「参入する意義が持てない」、ということになります。
結論の是非はともかく、論点を意識した結論(主張)を押さえることができれば、「聞いたことに応えていない」という批判を防ぐことができます。

主張(メッセージ)を意識する

結論は「論点」を意識するとして、途中の文章でも、「論点に準じた主張(メッセージ)」が導き出されていなければ、相手は理解をすることができません。
そこで、途中の文章の中で、「証拠」や「情報」をグルーピングし、そのグループに対して、それぞれ主張(メッセージ)をつける必要があります。

つまり、「論点に準じた主張(メッセージ)」を打ち出すことができれば、「いろいろ書いてあるけれど、何が言いたいのかよく分からない」という批判を防ぐことができます。

先の牛丼の話で言いますと、①主要なチェーン店、②市場規模、③価格競争というタイトルとそれを集約した文章では、全く主張(メッセージ)が出ていませんでしたが、①牛丼チェーンには、「吉野家」「松屋」「すき屋」があり、各社特徴を打ち出している、②日本には牛丼市場があり、成長している、③価格競争が激しく、価格は差別化要因になりにくい、という主張(メッセージ)ことを組み合わせることで、「当社の強みを活かした特徴が打ち出せるのであれば、参入の意義がある」という主張(メッセージ)を導き出すことができます。

なお、この主張(メッセージ)を導き出すには、それぞれの項目(グルーピングしたもの)を「概念化(抽象化)」する能力が求められます。

一般的に、ロジカルライティングの研修では、ロジックツリーを作ることで、「具現化(具体化)」を図ることが多いですが、実は、この「概念化(抽象化)」を通して、(本質的な)メッセージが導き出せるようになると、次の文章の構造(ストラクチャー)能力と相まって、一気に相手に伝わる「ロジカルな文書」を作成できるようになります。

文書の構造(ストラクチャー)を意識する

あまり知られてはいませんが、ヒトが物事を理解・納得するためには、文章の構成・構造(ストラクチャー)が関係しています。
先の牛丼の話で言いますと、いきなり結論である「当社は参入の意義があります」と述べても、相手はそれを受け止めることができません。
そこで、以下のような構成・構造で説明すると、相手は受け止めやすくなります。
①前提 日本には市場規模が大きく、成長している牛丼市場があり、
②理由 「安さ」は差別化要因にはなりにくいが、(安さ以外の)特徴を打ち出すことができるのであれば、
③結論 参入の意義がある。
なお、一般的には、ロジカルライティングには、ピラミッド・ストラクチャー(コンサルタントの育成や報告・文章能力の向上を目的に、マッキンゼーによって開発されたもの)が有効と言われています。
ピラミッド・ストラクチャーは、文章の書き手が伝えたい「結論」と「その根拠」をピラミッド状に構造化するフレームワークで、ピラミッド・ストラクチャーを意識した文書は、読み手が理解・納得しやすくなる効果があります。これは、結論を頂点として複数の根拠を、下部に配置したピラミッド構造にした方が、理解がしやすくなるためです。


先の牛丼の要素をピラミッド・ストラクチャーで表現すると、次のようになります。

<図 ピラミッド・ストラクチャー>

ロジカルライティングに使えるテクニック

これまで、相手に伝わるロジカルライティングの手順やコツについてご紹介してきましたが、ロジカルライティングを行う上で、求められるテクニックもあります。
そこで、ここからは、そのテクニックについてご紹介します。

抜け・モレ、ダブリを防ぐために、MECEを意識する

ヒトは、文章に信頼性があるかどうかを確信する為に、「網羅性」を気にするものです。特に、物事に慎重な日本人は、抜け・モレだけでなく、ダブリも気にしがちです。
そこで、相手に伝わる/相手が安心する/相手が疑わないようにするために、MECE*に気を付けたり、フォーマットやテンプレート、フレームワークを使います。
*MECE
「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取った造語で 直訳すると「互いに重複せず、全体として漏れがない」という意味で簡単に言うと、「漏れなく、ダブリがない状態」のこと。
なお、ロジカルな文章を書くためには、MECEであることを意識する必要がありますが、厳密にMECEでなくてもよく、聞き手や読み手に納得感があるかが重要です。そのため、一般的にはフレームワークを使う場合が多く、例えば、事業環境を分析する場合は3C(市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company))を、社内の企画書などでは、「タイトル、現状、問題・課題、提案、見込まれる効果」などの社内の企画書のフォーマットに沿って作成することで、MECEや納得感を満たすことができます。
先の牛丼の話で言いますと、牛丼チェーンの「吉野家」「松屋」「すき家」と、大手を全て対象に入れてMECEにすることで、「この情報で大丈夫か?」という批判を防ぐ一方で、情報の信頼性を高めることができるようになります。

ロジックツリー作成時にディメンジョンを意識する

先ほど、コツとして主張(メッセージ)の重要性を述べましたが、このディメンジョンもメッセージと同様、重要な要素ではあるものの、一般的なロジカルライティング研修では、あまり深く扱われません。また、ディメンジョンと聞いても良く分からない方も多いため、かみ砕いていうと、ディメンジョンとは、「グルーピングのテーマのカテゴリやレベルを合わせる」ということです。
先ほど、ヒトは「抜け漏れ」に目が行く、という話をしましたが、「カテゴリやレベル」にも目が行きます。目が行くというよりも、カテゴリやレベルが異なると、違和感を覚え、受け取ってもらいにくくなる/納得してもらいにくくなる、という表現が適切かも知れません。
先の事例でいくと、牛丼チェーンの中に、「吉野家」「松屋」「すき家」だけでなく、「なか卯」を入れたら、皆さんはどう感じますか。確かに、ゼンショーグループは「なか卯」も展開していますが、「なか卯」は、牛丼チェーンではなく、丼チェーンであるため、違和感を覚えられると思います。このように、調査対象や報告対象をやみくもに多くするのではなく、「牛丼チェーン」というカテゴリを意識したり、「牛丼チェーンと丼チェーン」と言った、(カテゴリの)レベルが異なるものを同一のレベルとして扱わないようにすることも必要です。

ロジックツリー作成時に展開方法を意識する

これは、ロジックツリーの作成時に意識しなければならない重要な展開方法で、①What:要素分解ツリー、②Why:原因追及ツリー、③How:問題解決ツリーというものがあり、ロジックツリーの解説時には、必ず紹介されるものです。
今回の事例では、調査報告として①What:要素分解ツリーをご紹介しましたが、社内で扱う報告書には、②問題提起をするもの、③問題解決の方向性を報告するもの、などがあり、それぞれ②Why:原因追及ツリー、③How:問題解決ツリーと、自分が作成する文書の趣旨に沿った手段を用いると、ロジック的に整った文書の作成を適切に行うことができます。
① What:要素分解ツリー
ある物事を、その構成要素で分解して作るロジックツリーです。そのままではわかりづらいものを、具体的な要素の集合として捉えることができます。それぞれの要素について検討したり、複数の要素を比較したりすることができます。
② Why:原因追及ツリー
問題の原因を掘り下げていくロジックツリーです。ある問題に対して、その問題が「なぜ起きたのか」を掘り下げていくことで、根本原因を追及していきます。
③ How:問題解決ツリー
解決方法を具体的にしていくロジックツリーです。「~したい」「~すべき」という達成目標に対して、「どうしたら解決できるのか」を挙げていくことで、その目標を達成するために取り得る方法を具体化していきます。
Whyツリーが作られてあれば、Whyツリーに対応させてHowツリーを作ることも可能です。

ストラクチャーを検討する際に使う、帰納法・演繹法

演繹法と帰納法は、物事を考える際の2つの代表的なアプローチです。特に、ピラミッド・ストラクチャーを検討する際には重要で、それぞれ結論を導き出す方法が異なり、状況に応じて使い分けたり、組み合わせたりすることで、より正確な(納得性の高い)結論を導き出すことができます。
ご紹介した事例では、それぞれの項目の主張(メッセージ)は帰納法で、最終的な結論である「参入する意義がある」という主張(メッセージ)は、演繹法で導き出されています。

① 帰納法

帰納法とは複数の事実や事例から導き出される共通点をまとめ、共通点から分かる根拠をもとに一般的な結論を導き出す方法です。複数の事実や事例を挙げることによって相手に納得感を与えることができます。
たとえば「日本の景気が悪い」「アメリカの景気が悪い」「中国の景気が悪い」という3つの事実があったとする場合、これらに共通しているのは「景気が悪い」という事実です。このことから、「世界的に景気が悪い」という一般論を(結論として)導き出すことができます。
先ほどの事例の場合は、例えば、価格の所で、3社の価格が低価格であることから、価格競争が激しい、という結論(メッセージ)を導いています。

② 演繹法

演繹法はルールや法則に基づく物事から結論を導き出す方法で、数学でいう三段論法です。
たとえば、「緑黄色野菜には栄養がある」という一般論に対して、「ニンジンは緑黄色野菜である」という物事を当てはめた結果、「ニンジンには栄養がある」という結論を導き出すことができます。
先ほどの事例の場合は、「当社の強みを特徴に活かすことができる」「特徴のあるチェーン店が市場を構成している(市場に参入する意義がある)」ということから、「当社の強みを特徴に活かすことができるため、参入する意義がある」という結論(メッセージ)を導いています。

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いかがでしたか。
自己成長支援ラボでは、一般的な「ロジカルライティング」研修で伝えることに加え、「相手に伝わる」ようにするために、「論点」を意識したり、「結論」を意識した「主張(メッセージ)」を出せるようにしたり、ロジックツリーを作成する時に、「ディメンジョン」を意識してもらうなど、オリジナルコンテンツも提供しています。
本当にビジネスに活かせるロジカルライティングのスキルを身につけたい/身に付けさせたい企業の方は、是非、自己成長支援ラボにお問い合わせください。