問題解決能力向上研修を行っている中で、事象をグルーピングして、それにタイトルをつける、というワークを行っていた時に、「適切なタイトルがつけられない」という事象が発生しました。
そして、受講後のアンケートでは、「概念化」が難しい、というコメントをいただきました。
そこで、ここでは、「概念化」に対するスキルについて解説させていただきます。
概念化とは
ある特定のものをグルーピングして、それに対するタイトルをつける場合、一般的には、「共通項を探す」という行為をされることが多いです。
もちろん、共通のキーワードなどが挙げられている場合は、その方法が適切ですが、共通のキーワードがある訳ではないが、関連があるような気がする・・・、と感じた時に、その関連性というか、その中から普遍性をどうやって導き出せば良いのでしょうか。
この関連性、普遍性を導き出すことを、抽象化・概念化と言われ、そのスキルはコンセプチュアルスキル、と言われています。
しかし、残念ながら、このコンセプチュアルスキルについて、体系的に、かつ、再現可能にするためのトレーニング方法というのは、一般化されていません。
とは言え、抽象化・概念化については、唯一「ハンモックモデル」というものがあります。
ハンモックモデル
ハンモックモデルとは、「抽象化」と「具体化」という2本の樹が左右に立っていて、そこに「概念化」というハンモックが掛かっている様子です。
詳しくは、以下をご覧ください。
なお、ここでお伝えしたいことは、概念化をしようしても、いきなり概念化はできず、その前に「抽象化」が必要ということです。
抽象化・概念化の具体的な方法
抽象化の具体的な方法
では、まず、抽象化とは何なのでしょうか。
“抽象化とは「具体的なもの」を「形のない概念」へと置き換える思考のプロセスを指す“と言われています。
例えば、
・お茶
・コーラ
・サイダー
・コーヒー・・・があったら、
これを抽象的に/一言で言うと何になりますか。
答えの例としては、「飲み物」とか「液体」とか、「ペットボトルで売られているもの」ですね。
つまり、抽象化とは、個々の具体的なものを、「要は」と、要約すること、とも言えます。
概念化の具体的な方法
次に、概念化について考えてきましょう。
“概念化とは、個別の物事が共有する性質や本質を体系的にまとめ上げ、理論化すること”と言われています。
例えば、先に抽象化された
・飲み物
・液体
・ペットボトルで売られているもの・・・があったら、
これを概念的に/本質的に表現するとどうなりますか。
答えの例としては、「のどの渇きをいやすもの」「飲んで気持ちよく、リラックスするもの」と言えます。
つまり、概念化とは、抽象化されたものから、「そもそも」と、本質を導きだすこと、とも言えます。
抽象化と概念化の違い
一般的に、抽象化は、「客観的に見る」とか「俯瞰的に見る」などと、言われますが、概念化の場合は、「普遍的に見る」、「主観的に見る」ことが入ってきます。
ちょっとわかったようで、やっぱりわかりにくいので、別の表現をすると、抽象化は「共通項を探す」ということになる一方、概念化は「本質を見出す」ということになります。
これでも、わかりにくいので、もっと言うと、「本質を導き出す」ためには、実は「主観」が入る、ということが大きく異なることと言えます。
概念化に求められる視点・能力
先の例で、最終的な概念化において、「のどの渇きをいやすもの」「飲んで気持ちよく、リラックスするもの」、と整理しましたが、これは、ある意味、「飲み手」の視点で、「自分が飲むもの」という主観が入っています。
一方、これを清涼飲料メーカーの方が見たら、どう見るでしょうか。
まず、抽象化の段階では、輸送の際に濃縮化でき、消費地に近い所で還元できるもの、と整理することができます。
例えば、ミネラルウォーターとかは、輸送の過程で濃縮できないため、原産地から1Lのものをそのまま持ってくることしかできませんが、先に挙げたものは、エッセンスを10ccとかに濃縮させて輸送し、後から消費地に近い所で1Lに還元できるもの、とも言えます。
但し、これは、あくまで「共通項」を出していることから、抽象化の域を出ません。
これを更に概念化させると、どうなるでしょうか。
これも、一例ですが、「原産地と消費地を分離させて製造できる液体」ということが言えます。 つまり、物事の本質、は、それぞれの立場・視点によって異なって導き出されるもの、すなわち、「主観が入るもの」とも言えます。
まとめ
概念化は、一足飛びにできるものではなく、思考の過程で、抽象化のステップが入っていることが確認されました。
一方、抽象化は客観的な思考が求められるため、これまで、概念化には、客観化が求められる、と言われてきました。
ところが、抽象化と概念化を分けて捉えると、概念化には、主観的な思考が求められることが確認されました。 つまり、概念化能力(コンセプチュアルスキル)を開発するには、抽象化能力と概念化能力を別々に開発する必要があり、特に、概念化能力を開発するためには、今までビジネスの中であまり重要視されてこなかった「主観的に物事を捉える」力の開発が必要になる、と言えます。